紅 葉 狩



燭台を手に、サスケはそっと部屋の扉を開けた。
木造の重い扉が幽かに軋る。
窓の無いその部屋には、薬の匂いが満ちていた。
薬と、血の匂い。
喀血したのは三日前だったし、血は綺麗に拭った筈だ。
それでも、血の匂いは消えていない。
不安気に幽かに眉を顰め、サスケは寝台に歩み寄った。
そして、そこに横たわる者の姿をつぶさに見つめる。
艶やかな黒髪が波打つように白いシーツの上に広がり、蝋燭の灯りがもたらす陰影は、端正な顔立ちを一層、際立たせている。
血を吐いてはいない事、まだ息をしている事を確かめて、サスケは漸く安堵の溜息を漏らした。
燭台と薬を小卓に載せ、シーツの上に広がる黒髪を見つめる。
それから、口を開いた。
「薬の時間だ――兄貴」

反応は無かったが、サスケはもとよりそれを期待してはいなかった。
うちはのアジトでの戦いから五日。
イタチは、ずっと意識の無いままだ。

ぴくりとも動かず薄闇の中に横たわるその姿は、精巧に出来た美しい人形のようだ。

緩やかな弧を描く眉。
絹糸のような長い睫。
すっと鼻筋の通った鼻。
幾分かふっくらとした、形の良い唇。

八年前に生き別れたとは言え、一緒に生まれ育った兄弟だ。
それなのに兄の顔をまじまじと見るのは、初めてのような気がする。
これ程までに美しかったのだと、改めて気づいた。
その美貌に惹かれるように、サスケはもう一度、兄に手を伸ばした。
躊躇いながらもそっと頬に触れると、その滑らかな感触に、ざわりと背筋が粟立つ。
眼を覚ますのを期待しながら、ずっとこのまま兄を見つめていたいとも思う。
その矛盾する感覚が、サスケを落ち着かなくさせた。
そしてそのざわめきは、何故か、甘い。

言い様の無い衝動に突き動かされ、サスケは横たわるイタチのすぐ隣に手を付いた。
ギシリと、古い寝台が軋る。
サスケはそのままイタチに覆いかぶさるようにして、ゆっくりと上体を屈める。
間近に兄を見つめ、それから眼を閉じた。

そして……












続きはアンソロジーでお楽しみ下さい(^.^)
アヤシゲな雰囲気、漂ってますが、全年齢対象です。

BISMARC



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